刀剣商の基礎知識と資格
刀剣・日本刀を売買する際に利用する刀剣商。刀剣・日本刀に興味を持つ人だけでなく、遺品整理や相続など思わぬ形で刀剣・日本刀が手元に来て売却する際にもお世話になる店舗です。今回は、刀剣商について、刀剣商の定義、刀剣商に必要な資格など、刀剣商に関する基礎知識をまとめましたので、ぜひ最後までご覧下さい。
▼ 目次
刀剣商の基礎知識
刀剣・日本刀とのかかわりがなければ訪れることはあまりない刀剣商。まずは、刀剣商の基礎知識について説明します。
刀剣商とはどのような仕事をしているのか、そして刀剣・日本刀の審査と鑑定の違い、刀剣・日本刀に関する2つの団体についてまとめましたので、順番に見ていきましょう。
刀剣商とは
刀剣商とは、その名の通り、刀剣・日本刀の販売及び買取を行なう業者のことです。現在、刀剣・日本刀は美術品として扱われ、ほとんどの取扱商品は古美術品となります。そのため、刀剣商を営むには古物商の許可が必要です。
また、刀剣類の扱いには、銃砲刀剣類所持取締法という法律も関係してくるため、関係法規にも詳しくなくてはなりません。
刀剣・日本刀の価格は刀剣本体や付属品の保存状態、貴重な物なのかどうかなど、様々な観点から決定されます。刀剣・日本刀の価値を見定めるためには、鑑定を受けるのが一般的です。では、刀剣・日本刀の鑑定とは、どのようなことを行なうのか見ていきましょう。
鑑定書が取得できる団体
刀剣・日本刀の鑑定自体は、どの刀剣商でも行なえます。ただし、刀剣商に依頼するか悩ましい場合は、「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」へ鑑定を依頼するのもひとつの方法です。
日本美術刀剣保存協会の鑑定では、刀剣・日本刀のランクなどが明確に分かりますが、価格の査定は一切行ないません。価格を査定したい場合は、全国刀剣商業協同組合へ問い合わせると良いでしょう。
日本美術刀剣保存協会は、1948年(昭和23年)2月24日に設立。戦後の混乱期、危機に瀕した日本刀を保護するために作られた組織です。日本美術刀剣保存協会の目的は、美術工芸品としての刀剣類の保存と公開。さらに、刀剣・日本刀の製作や研磨、刀装・刀装具の製作などの技術を無形文化財として保存、刀剣類製作に必要な材料の確保などを行なうことで、文化財の保護をすることです。刀剣類の調査研究や鑑賞指導の一環として刀剣類の鑑定審査を多く行なっています。
また、東京・両国駅近くの旧安田庭園にある刀剣博物館も運営。定期的に展覧会を開催しているので、浅草界隈を訪れる際は、ぜひ立ち寄ってみて下さい。
一方、全国刀剣商業協同組合は、事業の向上と社会的地位の確立を目指して、刀剣商や刀職者が集まって作った協同組合です。この組織でも刀剣・日本刀の評価鑑定を行なっている他、日本美術刀剣保存協会など3団体が監修している刀剣評価鑑定士の認定事業も開始。一定基準の鑑定が可能です。
全国刀剣商業協同組合は、年1回「大刀剣市」を開催。全国から多くの刀剣商が集まる刀剣・日本刀の展示即売会ですので、刀剣類を購入したいと考えている方は、時期を見て訪れてみましょう。
刀剣・日本刀の審査基準と鑑定書の発行
日本美術刀剣保存協会が定めている刀剣・日本刀の審査基準は、刀剣自体の審査基準として「保存刀剣」「特別保存刀剣」「重要刀剣」「特別重要刀剣」の4段階。最もランクが高いのは「特別重要刀剣」です。また、刀装の審査基準・刀装具の審査基準もそれぞれ定められており、これらを総合して鑑定書が作成されます。
「保存刀剣」は、江戸時代までの各時代・各流派の作で銘の正しい物、または無銘でも年代・国・系統が判別できる物。「特別保存刀剣」は、保存刀剣と比べて、さらに出来も保存状態も良い物」とされています。
「重要刀剣」は、特別保存刀剣のうち、さらに状態が良く国認定の重要美術品に準じる物。さらに年代的に南北朝時代を下らないものは無銘作でも合格対象になりますが、室町時代以降で在銘の物、かつ江戸時代以降の場合は生ぶ茎在銘(うぶなかございめい)とかなり条件が上がります。生ぶ茎とは、刀が制作された当時のままの状態で、茎に手を加えられていない状態のことです。
最もランクの高い「特別重要刀剣」は、重要刀剣の中で、さらに出来・保存状態が良く資料的価値も高い物。国認定の重要美術品に相当、または国指定の重要文化財に準ずると認められます。
鑑定では、刀身本体だけでなく、刀装や刀装具の状態も総合して判定されます。刀装とは、刀剣・日本刀を携帯するための外装のこと。刀装具は、刀装を構成する部品です。刀装や刀装具にも、各分野の職人がその技術を駆使しており、それぞれに鑑定を要します。
日本美術刀剣保存協会の鑑定では、審査区分(4段階)と審査対象(刀剣・刀装・刀装具)の組み合わせで行なわれ、それぞれ審査タイミングが異なる点には要注意です。日本美術刀剣保存協会の公式サイトにてスケジュールを公開していますが、多くの場合、刀剣と刀装・刀装具が隔月で行なわれる傾向にあります。
日本美術刀剣保存協会の鑑定では、審査月から審査の結果通知は1~3ヵ月後、実際に鑑定書が送付されるのはさらに1~3ヵ月後と時間がかかる点が難点です。鑑定を急ぐ場合は、全国刀剣商業協同組合、または信頼できる刀剣商を自分で探して依頼することも考えると良いでしょう。
刀剣商になるために必要な資格&持っておくと良い資格
刀剣・日本刀が大好きで刀剣商になりたい場合、刀剣商開業に必須な許可・資格は、古物商許可のみです。必須ではありませんが、今後持っておきたい資格としては、全国刀剣商業協同組合の刀剣評価鑑定士があります。刀剣商にとって重要なこれらの許可・資格は取得するのにどのような手順が必要か見ていきましょう。
刀剣商開業に必要な古物商許可
刀剣・日本刀は古美術品に当たるため、刀剣業開業には古物商の許可証が必須です。古物商許可は、古物商を営む場所を管轄する各都道府県の公安委員会に申請して取得します。もし複数の都道府県にまたがって刀剣商を営む場合は、店舗のある場所すべての都道府県の公安委員会に届けなくてはなりません。
窓口は、古物商の店舗を構える住所を管轄している警察署の生活安全係で、届け出の費用は19,000円です。個人の場合、必要書類は5種類あり、略歴書、個人用の誓約書、住民票の写し、登記事項証明書、市区町村の長の証明書となります。
略歴書は、最近5年間の略歴を書いた物。誓約書は、古物営業法第4条(許可の基準)及び第13条(管理者)の第2項で決められている内容に該当していないことを成約する書類です。住民票の写しは、役所で発行した物を持っていけば問題ありません。
登記事項証明書は、全国の法務局・地方法務局にて申請する書類で「成年被後見人・被保佐人に登記されていないこと」を証明します。また、市区町村の長の証明書は、本籍地の市区町村で発行を受ければなりません。これも、成年被後見人や被保佐人とみなされる者など、特定の条件に当てはまっていないことを証明する書類です。
自分ひとりで刀剣商を営むならこれで問題ありません。ただし、自分がオーナーであり、別に管理者を設ける場合は、管理者分の書類として略歴書、住民票の写し、登記事項証明書、市区町村の長の証明書という4種類が必要です。基本的にはこれらの書類をそろえて申請するだけで古物商許可証を取得することができます。
必須ではないがこれからは持っておきたい刀剣評価鑑定士
刀剣評価鑑定士は、全国刀剣商業協同組合が実施する試験で、2019年(平成31年)より始まった新しい資格です。受験資格には、加入期間が5年以上の組合員もしくは賛助会員で、なおかつ古物商許可証もしくは美術品商許可証取得後5年以上の経験が求められます。
認定試験は二肢択一方式で出題数は100問、試験時間は60分の試験。刀剣や刀装・刀装具などの基礎知識から評価・鑑定の知識、各種関連法律などの知識が幅広く問われます。認定料は3万円で、さらに5年に1回、更新料2万円が必要です。
まだできたばかりの資格ですが、刀剣商として5年以上の実務経験があること、刀剣・日本刀に関する幅広い知識を持っていることを証明できます。そのため、今後は刀剣商なら持っておきたい定番の資格になると言えます。
刀剣・日本刀を扱う際に関係する法律及び行政機関
刀剣商だけでなく、刀剣・日本刀を所持する人に関係する法律として「銃砲刀剣類所持取締法」(以降、銃刀法)があります。刀剣所持には、銃刀法で定められている「銃砲刀剣類登録証」(以降、登録証)が必須です。この章では、刀剣・日本刀に関する法律及び行政機関について解説します。
「銃砲刀剣類所持取締法」
銃刀法とは、銃や刀剣・日本刀などの危害を予防するために設けられた法律です。銃刀法第二条第2項によると、刀剣類は刃渡り15cm以上の刀、刃渡り5.5cm以上の剣などと定義されています。
刀剣・日本刀の所持については、銃刀法の第十四条「登録」に規定されている通り、所定の手続きにて登録をしなければなりません。刀剣類は、「美術品として価値ある物」として都道府県の教育委員会に届け出ます。刀剣類の届け出があると、教育委員会は都道府県の公安委員会への連絡もしなければなりません。
さらに教育委員会は、届けられた刀剣自体の審査を行ない、その刀剣・日本刀に問題がなければ「銃砲刀剣類登録証」を発行します。
刀剣所持に必須の「銃砲刀剣類登録証」
通常、刀剣商から購入する刀剣類には必ず登録証が付いており、購入者が再度登録証を取得する必要はありません。逆に、登録証のない刀剣・日本刀は所持できません。
自宅の蔵から出てきたり、遺品整理で譲ってもらったりして登録証が見当たらなければ、すみやかに自宅のある住所を管轄している警察署に出向き、「刀剣類発見届出済証」を発行しましょう。そして、都道府県の教育委員会に問い合わせ、刀剣登録審査日を確認します。審査日、教育委員会へ出向いて刀剣・日本刀の現物と刀剣類発見届出済証を渡し、審査を受けて合格すれば登録証が発行されます。
刀剣登録審査の基準は、その刀剣・日本刀が美術品として価値があるかどうかという点、日本製であり、焼けた跡などがないなどです。もし、審査に落ちて所持が認められなかった場合は、刀剣類発見届出済証を届け出た警察署に任意で提出することとなります。
刀剣・日本刀に関係する役所は、警察署と教育委員会です。銃刀法による取り締まりと刀剣・日本刀の数や種類などの管理は警察署、刀剣類を美術的な観点から審査して、美術品として認めるかどうかの判断は教育委員会が受け持ちます。
刀剣商で刀剣・日本刀を購入する手順
刀剣・日本刀が好きになり、刀剣商で購入したくなった場合、刀剣・日本刀の入手は、全国各地にある刀剣商から購入することになります。刀剣・日本刀の所持自体には、資格や登録は不要。販売されている刀剣類は、すでに銃砲刀剣類登録証を取得しているため、所有者の変更手続きのみ必要です。
刀剣・日本刀の購入によって所有者が変更となった場合は、新所有者側で20日以内に当該銃砲刀剣類を登録した教育委員会へ「所有者変更届出書」を届けなければなりません。例えば、所有者が大阪府に居住しており、購入した刀剣・日本刀の登録証は山形県である場合は、山形県の教育委員会へ、所有者変更の届け出をするということになります。
登録証のない刀剣・日本刀を入手したら?刀剣商に売却するまでの流れ
自宅の倉庫を整理していたら刀剣・日本刀が出てきた場合や、遺品として刀剣・日本刀を受け取った場合で銃砲刀剣類登録証がない場合、そのままでは刀剣商へ売却することはできません。まずは登録証を取得してから、刀剣商へ出向きましょう。
また、刀剣・日本刀が汚れていたりさびついていたりしても、刀剣・日本刀の手入れについて詳しくない場合は決して触ってはいけません。素人の手入れでは、銘の部分が消えたり傷を付けたりして、価値を大きく損なうことがあるためです。
登録証のない刀剣・日本刀を手にした時点で、すぐ自宅の住所を管轄している警察署に連絡して、刀剣類発見届出済証を発行。その後、教育委員会へ連絡して審査を受け、登録証を取得して下さい。審査を受ける際は6,300円が必要です。
少しでも高値で売却したい場合は、刀剣商に行く前に日本美術刀剣保存協会で審査を受けて鑑定書を取得する手段もあります。ただし、鑑定料と時間はかかりますので、準備しておきましょう。
美術品として楽しむ刀剣類。刀剣商に行けば、その美しい刀身を眺め、楽しむことができます。刀剣類の所持や売買に関する正しい知識を身に付け、刀剣商巡りをお楽しみ下さい。
※この記事は、2019年(令和元年)12月時点の情報に基づいて作成されています。
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